野上日記

2015年2月

卒業、そして・・・

こんにちは、Y館長です。

 
記念館にご来館いただいた方には、お差し支えなければ・・・ということで「御芳名帳」に記帳をお願いしています。
 
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記念館からのお知らせやご挨拶に利用させていただくのですが、ときたま手にとって頁を繰ってみると訪ねてくださった方々のお顔や伺ったお話などがたちまちに思い返されて、恰も日記を紐解くかの如き感興をそそられます。
 
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日記といえば、「ブログ」も「ウエッブログ」が詰まった言葉だそうで、ウエッブ上の記録が語源だとか・・・というわけで、この拙い館長ブログにも「野上日記」というタイトルが付けられている・・・
 
古来から日本には日記文学というものが多く残されていて、Yの乏しい記憶の中だけでも、土佐日記、紫式部日記、明月記、更級日記、蜻蛉日記云々と数え上げることができます。
 
文学的に著名なもの以外にも膨大かつ多様な記録が残されているであろうことは想像に難くなく、近年にはそんななかから「武士の家計簿」が生まれたり、近代以降でも、漱石日記、鴎外の従軍記であるうた日記、荷風の断腸亭日乗(岩波旧版の荷風全集を持っていますが全28巻のうち6巻が日記です)、蘆花の日記も読んだわけではありませんが荷風に劣らず大部であったような。残された量の多少に拘らなければ、個人全集には日記書簡集の類は不可欠ですね。
 
Y世代がコンテンポラリーに接したものといえば、高野悦子の「二十歳の原点」を筆頭に、康夫ちゃんのペログリ日記などというものもありました。
 
日記とはスタイルがことなりますが、時系列ということから往復書簡集である大島みち子の「愛と死をみつめて」(初めて読んだのはYが中二のときでした!片田舎の中学校の図書室にもあったということに当時のベストセラーぶりが偲ばれます)も思い浮かびます。
 
海外に目を向ければ、多分最も有名なものはアンネの日記でしょうか、古いものでYが実際に読んだものにはカエサル(シーザー)のガリア戦記、内乱記というのもあります。
藤飯治平記念館の本棚には、「ルネサンスの画家ポントルモの日記」というのもありました。
 
というところで当記念館の主である藤飯治平先生ですが、先生には日々の日常をつぶさに日記に残すという企みはなかったようですが、旅の記録は別で、たくさんの、所謂「取材ノオト」が残されています。
 
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この二冊は、そんな藤飯先生の初外遊となるのでしょうか、’67年にパリ大学への留学とそれに併せて旧ソ連から欧州を旅した際の紀行日記です。
 
当時のことですから、船(Y註:おそらくハバロフスク号)で旧ソ連ナホトカへ、その先はシベリヤ鉄道を乗り継いでの欧州道中記。
 
出発は’67年8月20日。
 
横浜港桟橋を午前11時に出航とあります。しばしその旅立ちの部分を・・・
 
「上甲板の端の方に行って、月やん(Y註:藤飯夫人)と父にテープを投げる。4本とどく。」
 
「本船のサービス、居ごこち、満点。夜になってもっと素晴らしい船であることがわかる。
 ・エンヂンの音が低いこと
 ・キャビンは広くないが快適・清潔。おまけに2人用に一人だから個室、鍵がかかる。冷房完備。
 ・船内で日本円が使える。
 ・ビールも酒もたばこも日ソ両方のものあり。
  ビールもサッポロ、キリン、アサヒ。バヤリースからコカ・コーラもある・・・」
 
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「4:30 ティータイム
 大きなコップで紅茶をポットで。いくらでもおかわり。
 クロワッサンのようなおいしいパンつき」
 
「5:30からサロンで映画がある。のぞいてみる。ソ連らしい歌や踊りや風景の映画。色彩は良好」
 
「船内のアナウンスは日、英、ロ三ヶ国語でくり返す。船客は日本人半分、外人半分 外人の内また大半がロシア人のようだ。
 いろいろな民族が集まっているが、ロシア人とそうでない白人は大体わかるようになる。」
 
「7:30 夕食 食べてばかりいるようだ。
 貝柱のくんせい、うまい。
 とにかく食欲はある。 しかし外人というのはよく食うね。」
 
「夜9:00 サロンで音楽パーティー
 バラライカの名手がいて、ピアノ、クラリネット、ベース、ドラムに合わせてロシアの民謡ばかり とてもうまい。
 みんな船員でアマチュアだ。
 ブルガーニンに似たのやガガーリン大佐、チトフ少佐次々に歌う。
(えつ? ガガーリン? チトフ? そんな人と一緒に乗ってたの?ほんま?←Yのびっくりコメント)
 よく見ると乗船の時、しかめつらしい(ママ)顔をしてパスポートの検査をしていた人もピアノを弾き歌を唄う。
 こんな楽しい愉快な船はないだろう
 船内のメイド(みんなかわいいがボリューム)もいっしょにサロンで遊ぶ。サービスしながら自分も楽しんでいる。
 ビールやジュースも持ち込んできて売ってくれる。なかなか商売がうまい・・・
 ダンスを始める。こんなときすましているのはやはり日本人に多い。
 見ているのはつまらないからメードや船内のロシア人と踊る。ゴーゴーやマンボ、何でもうまいものだ。
 バンドが「レッツキッス」をやりだした。みんな輪になってお尻をもってつながって踊りだしてしまった。肩章をつけたパーサーや士官も入っている。
 アメリカ人らしいハイティーンも・・・
 歌ったり踊ったりゲームをしたりして、知らぬ内に時間がたった。12時に終わり。
 旅行第一日はソ連の人たちのお陰で楽しい一日だった。
 風呂に入りひげをそり12:30 ねる」
 
翌日にはこんなことも・・・
 
「甲板でスウェーデンの女の子(美人ではない)と話す。いかめしい顔つき、体つきだが話すと可愛く愛想がいい。友だちになる」
「午后 デッキでフランス人のマドモアゼルがいる。フランス語で話しかける(心ぞう)
 彼女の読んでいる本がフランス語の本だったので「あなた、フランス人?」一発で通じた。「ウイ」 あとがいけません、しかし、彼女がパリのデザイナーでエッフェル塔の近くに住んでいることなどわかる。
 彼女の英語、僕のフランス語程度、或いはそれ以下」



と続くのですが、あとは記念館でとくとご覧ください。
 
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このノオトを手にとって、Yが思い出したもの・・・
 
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そう、ゴッホの手紙です。
 
その昔、小林秀雄の評論に誘(いざな)われて、みすず書房の一巻本選集に手を染めた「重い」記憶があるのですが、もちろん内容はまるで異なるのですが、藤飯ノオトの字面を見ているとふと浮かんできたということで・・・
 
 
そうそう、この藤飯ノオトの間にはさまれていた一枚のカード・・・
 
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藤飯夫人「月やん」が異国で誕生日を迎える先生に送った手製のバースデー・カード・・・
 
中身を開くと・・・・
 
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・・・・・・・・
 
 
あちらこちらから梅便りが聞こえてくれば、学院では入学試験を終えて、卒業シーズンへ・・・
 
今年も、来週の高等学校を皮切りに幼、小、中、高総勢500人がそれぞれ前途洋々に巣立っていきます。
 
巣立つといえば、この館長ブログの書き手であるYですが、開館以来一緒に助けてもらったA職員ともども、この年度末で遅い遅い「巣立ち」を迎えさせていただきます・・・
 
あっ、流石に「巣立ち」は夢多き若人らに失礼ですね、Yの場合は「引退」「リタイア」「退場」「隠居」うーん、なんと呼んでいただいても「前途洋洋」とだけは無縁のようで・・・それでも年寄りの冷や水、ちょびっとの「夢」はあったりするのですが・・・
 
そんなわけで、Y館長が綴ります「野上日記」は今回を持ちまして最終回、次回からは新しい◯◯(?)館長が務めさせていただくことと思います。
 
記念館での勤務も来週いっぱいですが、足掛け三年、取り留めなく書き散らし放題の拙い日記を辛抱強く読んでくださった皆さんに感謝申し上げます。
 
今後とも新体制の仁川学院藤飯治平記念館をよろしくお願いします。
 
 
吹き別れ吹き別れても千鳥かな   千代女
 
行春や鳥啼魚の目は泪 芭蕉
 
勧君金屈巵
満酌不須辞
花發多風雨
人生足別離  于武陵
 
グッバイ、オ フヴォワーフ、アウフヴィーダーゼン、アルベデルチ、アスタルエゴ、アディオス、ダ スウィダーニャ、マッサラーマ、ラーコン、ツァイ ツェン、アンニョンヒ ケーセヨ、マタヤーサイ・・・・
 
そして、サヨナラ・・・・ゴキゲンヨー
 
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旧正月

こんにちは、Y館長です。

 
節分、立春も過ぎて、間もなく旧正月(今年は19日だとか)。
 
中華文化圏では旧正月を「春節」と称して新暦正月以上に盛大に祝うのだそうですが、中国大陸での壮絶とも思える帰省風景はテレビニュースでもよく目にするところです。
 
翻って、日本で旧正月を祝うという習慣はもうすっかり過去のもの、「旧正月」という言葉さえ耳に、目にする機会も殆どありません。
 
「小正月」もほぼ死語に近いか・・・地方によっては、かろうじて神事や民俗文化として根付いているところもあるようですが、「保存」という側面が大きいようにも思えます。
 
昨日の休日は、私事で神戸三宮界隈を歩いていたのですが、来週の南京町は「春節祭」でさぞ賑わうことでしょうね・・・
 
 
一昨日の10日は、県下の私立高校の入学試験でした。仁川学院高校でも、3000人の中3生がこの春からの新しい学びへの扉を開くため、最初のスッテプである受験に臨みました。
 
当日の朝、多くの受験生の乗換駅となる阪急西宮北口駅では、宝塚に向かう今津線のホームが沿線各校の受験生で満ち溢れ、最後尾の車両では積み残しが出るのではと心配するほどの混雑ぶりでしたが、若い活力・気力が満ちた風景に思わず頬が緩むYでありました・・・うーん、歳かなぁ・・・
 
 
そんな若い希望につながる景色がある一方、巷には年明け早々から思わず耳を疑い目をそむけるような報道が相次いでいますが、「和と善」のこころは必ず通じ合う、そんな信念を貫く勇気を持ちたい、或いはどんな環境のもとでも持ち続けたいものだと思います。
 
 
年明け以降のウイズたからづか効果で、引き続き、新しく来館くださるかたが増えています。
 
これも希望につながる一景色と感謝しつつ、お客さまに拙い案内をさせていただいてます。
 
 
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